大分の実家から徒歩で行ける大学に通う学生時代は、週末ともなれば車で福岡の屋台まで遠征するほどにラーメン好きだったのに、今や断然サイミン派。最初に食べた時の、え、そんなに味しないじゃない、と思った自分を否定したいほどに大好きになってしまっている。エビや昆布でとった出汁は優しく、少しだけ縮れた中太の麺はどっちつかず。基本トッピングは薄いチャーシューと鳴門。​地味な見た目と味についつい愛情を注ぎたくなるのか回数を重ねていくうちに毎日たべたいものに変わっていく不思議。数あるサイミン店の中でもここシローズサイミンは、エンタメ性も備えたスター選手。だってサイミンの種類が64！メニューに番号がふられていますからね。ウェイトレスさんもコックさんもこれをばっちり覚えているんだからすごいよなあ。

1969年創業から毎日店に立っていたオーナーのフランツ松尾シローさん。2012年に93歳の天寿を全うされましたが、生前にお店で何度かお話しし、ハワイへの愛情とおもてなしマインドに、いいお店だなあと思ったことがサイミンを好きになるきっかけだったような気がします。優しくてあったかくてまた会いたいと思う味。そう、サイミンは人けを感じる食べ物なんだ。シローさんはもういないけど、ここのサイミンを食べるたびにシローさんに会っている心持ちになります。なんでものっけたドドンパサイミンは人を喜ばせる達人だったシローさんらしい逸品。